|
朝もやの漂う西湖の風景は、水、木、空気、そして由緒ある建築物が溶け合うかのように、幽玄な空間を醸し出す。
北宋の首都だった河南省開封。
町全体が歴史に取り残されたかのように、昔ながらの優美さを誇っていた。
しかしこの杭州では、開封にも増して優美な風景を見ることができる。
かつてマルコポーロがこの地を訪れた時、東洋一美しい町と言わせしめた風景の断片が、まだこの町には残っている。
揚子江沿岸を変貌させた、長江の奇跡と言われる経済発展は、この町の風貌をも大きく変えた。
しかし、それでも朝の西湖に立つと、静かで、全てが溶け合うかのような優美な世界を見ることができる。
中国春秋時代、ここで覇権を争った呉と越。
越王から呉王・夫差に嫁いだ世紀の美女・西子。その西子を例えて、この美しい湖は西湖と名付けられた。
杭州の町は、浙江の他の町と少し雰囲気が違う。 それは、北宋という北の文化が、大挙してこの地に異動してきたことを物語っている。
杭州・西湖の優美な風景。
紹興酒、臥薪嘗胆、魯迅、周恩来。
日本人であれば、この辺りの言葉は聞いたことがあるのではないか。 紹興の歴史と切り離すことのできない言葉ばかりだ。
浙江省紹興。
この町は、浙江平原に広がる由緒ある町だ。
呉王・夫差が越との戦いに敗れ、薪の中に身を臥し、苦い肝を舐めて復讐を誓った町。多くの酒蔵のある町。
浙江の美しい農村地帯を歩いていると、何故か遠い昔に目にしたような懐かしい気持ちに襲われる。
夕暮れ時、野良犬が村の外れで遠吠えをしている。畑には農具を担いで家路を急ぐ人々がいる。家の中では、裸電球がボオッと光を放っている。剥き出しの電線が木の電柱を伝って、村の外へと続いている。
そして、日が暮れると視界から人影が消えた。後は静かな畑と水路、電気のつく農家が見えるだけだ。
老舗の酒蔵で夕食をとる機会があった。紹興一と言われる酒蔵だ。
ここで味わった紹興酒の味は忘れられない。ワインのような口当たりで、甘味がある。
私は紹興酒が大嫌いなのだが、ここの紹興酒は飲める。本当の良い紹興酒は、甘くこくがあるのだ。辛味、臭みが全くない。 そして酒蔵には、ふたをした土の壷が無数に並ぶ。中国の田舎で、静かな夜が過ぎていく。
紹興の農村にて 浙江の香漂う風景

寧波を出た上海行きの船は、浙江の水郷地帯を進んで行く。
やがて、真っ赤な夕焼けが広がり始めた。素晴らしい夕焼けだ。
河の両岸には黄金色の稲穂、白い2階建ての浙江の農家がどこまでも続いている。
そして、夕焼けが更にそれを際立たせ、素晴らしい風景を醸し出していた。これこそが、私が追い求めていた浙江の風景なのかもしれない。
やがて船は杭州湾に出た。一路上海へ北上していく。明け方には上海だ。
|