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遼寧省

東半島から北に伸びる黄海、渤海に囲まれた地域に、日本と近代史上関わり合いの深い遼寧省があります。 省内には、大連・旅順(旅大)、瀋陽(奉天)などの町があり、満州国時代に日本の残した遺構が数多く残っています。
旅順・203高地周辺には、ロシア対日本の激戦の跡が残り、日本の近代史に興味のある人には、印象深い地域となること請け合いです。
自然環境では、冬凍らぬ黄海、冬に完全凍結する渤海と、旅順を境に全く異なる風景を醸し出す2つの海や、北朝鮮国境を悠々と流れる鴨緑江、普蘭店から瓦房店一帯に広がる平原、高句麗の古戦場、海城近郊の鉱山地帯、清発祥の地・瀋陽近郊の陵墓群や、故宮、袖岩の玉製品など見所は色々あります。
旅に疲れたら大連に戻り、豊かなシーフードを存分に楽しめます。

は、1994年から4年8ヶ月、大連に駐在し、この地域を深く堪能しました。 大連・付家庄海岸沖の島に渡ってバーベキューをしたり、同僚と西朝鮮湾の群島に渡り休暇を過ごしたことも有ります。 そしていつしか、この町が第二の故郷のように思えるようになりました。
社宅の窓の向こうには黄海が広がり、四季折々の風景を見せてくれます。 そんな景色を見つめながら、私は「辺境の輝」きという自費出版本を完成させました。 1997年のことでした。

普蘭店郊外に広がる平原は、雄大な景色を見せてくれる。 どこまでも続くとうもろこし畑、一筋の未舗装道路。そんな世界を、農家のトラックに臨時タクシーになってもらって走る。
トラックの荷台に乗っての平原ドライブ。
当時私の上司だった香港人課長を説得して、若者で結託して出発した課内旅行。
課長は埃まみれで閉口しているが、我々若者は歓声を上げて喜んでいる。 大平原をトラックが悠々と走って行く。自由の大地。そんな言葉がぴったりだ。
社会人になって7年。
何でも有りの課内旅行で、我々は自由を満喫し、雄大な景色の中を進んでいった。

皮口を出発した船は、霧にかすむ島に近づいて行った。

長山群島。

ここは遼寧省の秘境だ。漁民の住む静かな島である。
農民のトラクターで、とある海岸の民宿まで送ってもらう。未舗装の山道をトラクターは進んでいく。怖れを知らない旅。地図を見て、「いっちまえ」の一言で片付けてしまう向こう見ずな旅である。これもまた課内旅行だった。課内の仲間も面白がって付いてくる。やっぱり若いパワーは素晴らしい。いてまえ打線ならず、いてまえ旅行。旅先は止まる所を知らない。
夕刻、海が夕焼けに染まり漁船がシルエットとなる頃、海にただずむ。絵になる風景だ。

旅順郊外北海鎮。

海岸の向こうに広がる渤海を見て、子供が歓声を上げた。真っ白に凍り付いている。結氷した海を見るのは始めてだった。
海は波のように所々盛り上がりながら、見渡す限りの世界が凍り付いている。
沖まで歩いて見る。完全に凍っている。船もまた凍り付いている。凄い世界だ。全てが氷に支配されている。
ロシアが旅順に執着した理由がはっきりとわかる。旅順が最後の不凍港なのだ。
旅順を回り、遼東半島をちょっと渤海寄りに入るともうこの有様だ。 船は動けない。つまり冬の間、何も活動できなくなるのである。 歴史上戦いが起こった理由を目の当たりにする。
それにしても、大連まではすぐの距離なのに、何故こうも世界が異なるのだろう。海流のせいなのだろうが、わずかな距離でこれだけ景観を変えてしまう大自然の力に、思わずため息が出てしまう。

西朝鮮湾の秘境・長山群島の夕暮れ

瀋陽には、清代の歴史遺産がいくつもある。
初代皇帝・ヌルハチの陵墓を歩く。
緑に覆われ静かな陵墓だ。満族の建てた帝国。彼らは明に代わり、世界有数の大帝国を築いた。そしてこの帝国の没落で中国は混乱し、共産主義の出現で再度安定を取り戻す。しかし、世界的に見れば国民の生活水準などまだまだである。
結局、明滅亡から漢族の没落は始まっていた。清に征服され、海外列強の進出から日本との戦争へ、そして共産主義出現による鎖国政策へ。。。今、中国は長い没落の歴史に終止符を打つべく、社会資本主義を導入しリストラクチャリングの真っ最中だ。漢族栄光の歴史を取り戻せるかどうかは、国民のモラルにかかっている。
この東陵を見ていると、満族栄光の歴史ももう過去のものであることを実感させられる。
時代の中心は、再度漢族の手に戻っている。歴史は生き物だ。これからの中国は、どのような道を辿るのであろう。
そして、太古より独立を保ちつづけた日本という素晴らしい国は、これからも同様に繁栄を続けられるのであろうか。全ては時の流れに支配されている。

ライン

広西壮族自治区

西は、ベトナムと広範囲で国境を接しています。 貴州から続くカルスト地形がベトナムのハロン湾で海に注ぐまで、桂林と似た風景の続く、美しい景観を持った土地です。その景観のハイライトは勿論桂林なのですが、ベトナム国境地帯でも美しく手のついていないカルスト地形を見ることが出来ます。
文化的には広東の影響が強いのですが、ベトナム的な文化もあって、国境地帯では独特な雰囲気を見ることが出来ます。
省都・南寧は立派な町で、マジェスティック・ホテルなど国際級のホテルもあり、ゆっくり身体を休めることが出来ます。

私は、南寧を中心にベトナム国境・友誼関、東興ボーダーからベトナム・ランソンなどへ旅したことがあります。その際のエッセイをご紹介します。

私は、南寧空港で捕まえたタクシーに250元を掴ませ、ベトナム国境まで一気に飛ばしてもらっていた。 正月の休みは短い。 今や中国の交通網も発達し、大連から1日でベトナム国境まで入れるのだ。
カルスト台地をタクシーは走る。いつしか農民の帽子がベトナム風の三角帽子になった。桂林のような風景が続く。
そしてその風景が切れた頃、山中に中国風の凱旋門が現れた。

友誼関。

中越国境だった。すぐ先に国境税関の建物が見える。友誼関に入る。
建物のあちこちに弾痕が残っている。中越国境紛争の際、戦闘があったのだ。 中には、ホーチミンととう小平ががっちりと握手した写真が飾られている。国境紛争終結時の写真だ。
友誼関の建物の上部から国境を見下ろすと、昔ベトナムの仏領インドシナ時代の建物だろうか、フランス風の税関の建物がひっそりと建っている。
ベトナム側の遥か下方より、リュックを背負ったアジア系のカップルが登ってきた。いい風景だ。カップルで辺境旅行だ。きっとこの国境越えは忘れられない思い出になるだろう。二人で仲良く国境を越えてくる。台湾か香港の人だろうか。彼らの表情を友誼関の上から見つめた。国境を越え、二人で喜び合っている。
辺境の国境を越えた達成感からだろうか。それとも中国という、ベトナムとは異なる世界に心をときめかせているのだろうか。二人は確かにこの辺境の山中で輝いていた。また一つ、辺境で輝く瞬間を見ることが出来た。
静かに国境でのひとときが流れて行く。


中越国境の町・ランソン

東興ボーダーのベトナム側。橋の下は川

ベトナム国境・東興で、私は指をくわえてベトナム側を見つめていた。 目の前にベトナムがありながら入れない現実に、無念さを隠しきれない。 そんな時、一人の男が声をかけてきた。
「ベトナムへ行って見るか?」
「ヴィザがない」
「ヴィザならおれが何とかしてやる」
「外国人は無理なはずだ」
「大丈夫。オレがガイドでついていけば安全だ。保証する。」
間もなく男は、1日滞在のヴィザを持ってきた。ヴィザには中国人の名が書いてある。
「これは偽造ヴィザじゃないか」
「だからおれが一緒に行くから大丈夫だ。おれの顔がヴィザなんだ」
本当かよーと言いながら、引っ張られて税関に入ってしまった。 あっさり出国手続完了。ベトナム側の入国も一瞬で済んだ。
中越国境紛争で破壊された建物が草原に散在している。その風景に圧倒されて、心配も吹き飛んでしまった。もうそこはベトナム世界だった。 可愛らしい顔をした女性たちが、三角帽子をかぶってたむろしている。 草原を突っ切ると町に出た。

国境の町・ランソン。

フランス統治時代の遺構が見える。 そして文字が、漢字からベトナムの文字に変わった。
青空市場に入ると、色々な珍しいものが並んでいる。珍しくて町中を歩き回った。
そして夕刻、中国に戻るとき、中国側の税関には、制服を着た国境警備隊の兵士と税関の主任が腕組みをして待ち構えていた。税関をそ知らぬ顔をして抜けようとした時、声がかけられた。
「お前、ちょっとこっちの部屋へ来い」
取調室に連れて行かれ、尋問される。
「お前外国人だろう」
「いいや、中国人だ」
こんな押し問答が続いた。 ガイドの野郎は中国人だと言い張れと言うが、住所や電話番号を聞かれても答えられない。 2時間近く尋問され、トイレの窓から逃げ出してやろうかとも思ったが、結局事情を説明して罰金を支払って解放してもらうということで話が付いた。
罰金200元、カメラのフィルムは没収。
罰金の領収書は、何故かガイドの会社名義で、支払った私の手元には来ない。 その時、私は自分がはめられたことに気がついていた。
国境を越えた証拠が何もない。罰金を払った証拠もない。税関の人間が罰金を受け取った証拠もないのである。
できすぎだ。多分金は彼らのポケットに入るだろう。しかし私はだまって国境を立ち去った。200元でのベトナム1日旅行。安いものである。そして、ポケットにあるもう1本の隠しフィルムを、私は静かに握り締めていた。
夜、南寧のマジェスティックホテルで一息つき、ビールを飲んだ。今日のビールの味は最高だ。
リスクを冒したが、十分に対価はもぎ取った。別にスパイやってるわけじゃないし、反社会的なことやるわけでもなし、ちょっとくらい国境の向こう見せてくれてもいいじゃんか。けちな国。。。なんて思いながらも、一方でやっぱり見たいと思い続ければ見られるんだな。思い続ける事って大事なんだな、と実感させられた。
どんな話が転がり込んでくるか解らない。正月休みを使った一人旅。家族には言えない内緒の冒険旅行。心の中は爽快だ。

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